タイヤハウスは、車両の中で最も過酷な環境に晒され続けている場所です。ボディの外板パネルのようにコーティングを施してピカピカに磨き上げるユーザーであっても、タイヤハウスの奥深くまで念入りに清掃しているケースは稀でしょう。しかし、整備現場の取材で浮かび上がったのは、この見えない空間に蓄積した「泥の塊」が愛車の下回りを静かに腐敗させていく生々しい実態です。
雨天走行時、タイヤハウス内には路面の砂利や泥が猛烈な勢いで吹き付けられます。特にフェンダーアーチの折り返し部分(爪の部分)や、フェンダーライナーと金属フレームのわずかな隙間には、泥や砂がポケットのように溜まりやすくなっています。この泥が厄介なのは、一度入り込むと自然には排出されず、常に湿気を抱え込み続ける点です。さらに冬季の高速道路や降雪地域で散布される凍結防止剤(塩化カルシウム)を含んだ塩水が混ざり合うと、金属パネルの防錆被膜を破壊し、内部から鉄板をグズグズに腐食させる「電食・赤サビ」の温床となります。
中古車査定士の証言によれば、「外装は極上に見えても、タイヤハウスの内側を覗き込むとサスペンションの支持部(ストラットタワー周辺)がサビで抜け落ちそうになっており、修復歴あり・査定額大幅減額となる個体が多い」といいます。
愛車の長寿化を図るための正しい洗車手順は、以下の通りです。
まず、高圧洗浄機を使用する際は、ノズルをフェンダーアーチの真下から斜め上へ向け、金属の折り返し部分に溜まった泥の堆積物を押し流します。ただし、フェンダーライナーの固定クリップに向けてゼロ距離で超高圧の水を噴射すると、クリップが弾け飛んでライナーが脱落する原因になるため、30cm以上の距離を保つ配慮が必要です。頑固に固着した油分混じりのピッチ・タール汚れには、アルカリ性洗浄剤や専用のピッチクリーナーを塗布し、毛足の柔らかいロングブラシで優しくかき出してから濯ぎます。
そして降雪シーズン前や沿岸部での使用が多い車両は、ノックスドールなどの油性防錆アンダーコートスプレーを施工しておくことが極めて有効です。樹脂ライナーの内側に隠れている生フレームに強固な防錆被膜を形成しておくことで、数年後のサビ発生率を圧倒的に抑え込むことが可能です。