ネット上の育児掲示板やSNSでは、「『いやだいやだ』を読ませれば魔のイヤイヤ期が落ち着くのか」という切実な問いが日々投稿されています。結論から言えば、この絵本に子どものかんしゃくを一発で鎮静化させる魔法のような即効性はありません。しかし、数多くの保育士や小児発達の専門家が指摘するように、「子どもの心に強烈な楔(くさび)を打ち込み、自己と他者の関係性を学ばせる力」においては、他の追随を許さない決定的な効果を持っています。
そもそも本作におけるいやだいやだ対象年齢は、出版元の公式案内や書店ナビゲーションにおいて「1歳から2歳」と位置づけられています。多くの親が「いやだいやだ何歳から読み聞かせるべきか」と悩みますが、自我の芽生えが始まる1歳半前後から、言葉による自己主張が爆発する2歳半頃がまさにドンピシャの適齢期です。国内最大級の絵本レビューサイト「絵本ナビ」に集まった240件以上のレビューを精査すると、父親たちからも「まさに今適齢期で共感しかない」「人間の一面を容赦なく描いている」といった高い評価が寄せられています。
では、なぜこのシンプルな貼り絵の物語が、言葉を覚えたばかりの幼子の琴線に触れるのでしょうか。その理由は、子ども自身が抱えている「自分でもコントロールできない反抗心」を、主人公の少女がそのまま代弁してくれる点にあります。一方で、効果を実感するためには親側の姿勢が問われます。いやだいやだ読み聞かせのコツとして現場の保育士が口を揃えるのは、「『ほら、あなたと一緒でしょ!』と説教の道具にしないこと」です。親が感情を押し殺し、淡々と、しかしリズミカルにルルちゃんの反抗を読み上げることで、子どもは初めて自分の姿を安全な物語の枠組みの中で見つめ直すことができるのです。