和の空間表現において最も重視されるのが、「陰翳(いんえい)」と「引き算の美」である。どれほど美しいカウンターを用意しても、電子レンジや炊飯器、雑多な調味料の容器が乱立していては、その静寂は一瞬で崩れ去ってしまう。
そこで活躍するのが、伝統的な建具の構造を応用した「見せない収納」だ。引き戸を開けると一瞬で作業スペースが現れ、使い終わって閉めれば一枚のすっきりとした木目の壁に戻る。格子戸や障子風のアクリルパネルを滑らせる引き戸機構は、伝統工芸の指物職人と現代のハードウェアメーカーが共同開発したものも多く、ミリ単位の滑らかな開閉感を実現している。家電製品のコード類はすべて内部に隠蔽され、視界に入るのは一輪挿しの花と手作りの陶器だけ、という贅沢な空間が実現する。