力餅食堂の歴史を紐解くと、1889年(明治22年)に兵庫県で創業した小さな餅屋にたどり着く。そこから発展したのが、独自の「暖簾分け」制度だ。本店で長年修業を積んだ弟子だけに暖簾の受け継ぎを許し、看板とマークの使用を認めつつも、経営や味付けの独立性を担保する。フランチャイズ(FC)システムとは一線を画す、職人同士の信頼関係に基づいた伝統的なネットワークである。
最盛期には関西一円に百数十店舗を数えたこのネットワークも、時代の波には逆らえなかった。店主の高齢化と後継者不足、さらには築数十年を超える店舗建物の老朽化。2010年代以降、廃業の知らせは後を絶たず、一時は「消滅寸前の絶滅危惧種」とまで囁かれた。
しかし、この「ゆるやかな連帯」こそが、2026年現在の存続劇において予期せぬ強みを発揮している。本部による厳しい制約がないため、各店が地域のニーズに合わせて柔軟に変化することができたのだ。