時計の針を少し巻き戻そう。濱口竜介監督の映画『寝ても覚めても』でカンヌ国際映画祭のレッドカーペットを踏んだとき、彼女はまだ20代前半の脆さと透明感を併せ持っていた。日常と狂気のあわいを漂うヒロイン像は世界的な称賛を浴び、日本映画界のホープとして一気に躍り出た。
しかし、その眩い光は一瞬にして暗転する。世間からの猛烈なバッシング、表舞台からの完全なフェードアウト。カメラの前に立つことすら許されない長い空白期間が続いた。だが、あの作品で見せた「カメラの前で嘘をつけない生々しさ」こそが、現在の彼女を形作る決定的なマグマとなっていたことは見逃せない。