人工飼料の普及が進む一方で、頑なに口を開かない個体に頭を抱える飼育者は多い。日本爬虫両棲類学会の研究報告やフィールドワークの知見を紐解くと、野生下のニホントカゲはクモ、甲虫、ワラジムシ、ミミズなど極めて多様な小型無脊椎動物を捕食していることがわかる。単一のコオロギやミルワームだけを与え続ける偏食は、微量栄養素の欠乏を招き、突然の拒食の引き金となる。
生き餌を与える際にも、給餌直前に昆虫へ栄養価の高い野菜やカルシウム剤を食べさせる「ガットローディング」と、粉末カルシウムをまぶす「ダスティング」の徹底が欠かせない。餌を食べなくなった場合は、ケージ温度の再確認、照明の照射強度、さらには人の視線を遮る目隠しの設置など、環境ストレスを取り除くアプローチが最優先される。力任せの強制給餌は最後の手段であり、まずはトカゲが安心して捕食できる空間作りが鍵を握る。