東洋医学(Traditional Chinese Medicine)の古典において、人迎穴(ST9)は胃の腑と繋がる「足陽明胃経」に属する極めて重要な経穴として記録されてきた。3世紀の中国、西晋の時代に皇甫謐(鍼灸甲乙経編纂者)が記した体系的な医学書にも、その臨床的な価値と同時に、刺鍼時の厳格な禁忌が明確に示されている。脈の拍動を迎える場所、すなわち「人(ひと)を迎える」という名が冠されたこの部位は、世界保健機関(WHO)による国際経穴標準化においても「ST9」として正式に登録されている。
解剖学的に見ると、このツボの深部には頸動脈洞が存在する。心臓から脳へと血液を送り出す総頸動脈が内頸動脈と外頸動脈に枝分かれする分岐部に位置し、体内でも屈指の血圧センサーとして機能している。古来の知恵と現代解剖学がまさに一致する地点なのだ。