ハイエース グランドキャビンを手放した元オーナーたちが口を揃えて挙げる最大の挫折要因は、取り回しの難易度と日本のインフラとの致命的なミスマッチです。カタログスペック上の数値を見るだけでは実感しにくい、日常空間での圧倒的な圧迫感がドライバーの精神をすり減らしていきます。
最も深刻な障壁となるのが「全高2,285mm」という垂直方向のサイズです。国内の商業施設、スーパー、総合病院などに設置されている自走式立体駐車場や地下駐車場の多くは、進入制限が「高さ2.1m以下」に設定されています。一部の古いパーキングでは「2.0m以下」も珍しくありません。つまり、グランドキャビンは街中の大半の屋内駐車場に物理的に入場できず、青空駐車場を探して街中を何周も彷徨う事態が日常茶飯事となります。
さらに、平面のコインパーキングに停められたとしても安心はできません。一般的な駐車マスの長さは5,000mm程度に設計されているため、全長5,380mmのグランドキャビンを枠線いっぱいにバックさせても、フロントノーズが約40cmも通路側へ飛び出します。隣接する車への気遣いや、通路を行き交う車との接触リスクに対するプレッシャーは想像を絶します。
運転感覚においても、ホイールベース3,110mmが生み出す特大な内輪差と、最小回転半径6.1m(4WDは6.3m)という大回りの挙動がドライバーを苦しめます。運転席が前輪の真上に位置する「キャブオーバー型」特有の視界には慣れが必要で、狭い交差点の左折時には「限界まで交差点の中心へ前進してから一気にハンドルを切る」という大型車特有の操舵が求められます。自宅周辺に隘路やクランクがある住宅地では、日々の出走自体が大きな精神的ストレスへと直結してしまいます。