秋吉久美子という女優は、常に時代の最先端を走り、既成概念を壊し続けてきた。1979年に作曲家と結婚し、長男を出産。しかし、当時の彼女はキャリアの絶頂期にあり、育児と仕事の両立は困難を極めた。「子供は卵で産みたい」という彼女の過去の発言が、事件後に再び取り沙汰され、冷酷な母親像としてバッシングの対象になったこともある。
だが、実際の親子関係は単なる冷淡さとは異なる、もっと複雑で濃密なものだった。息子にとって、秋吉は「母」であると同時に、超えることのできない「絶対的なカリスマ」だった。その巨大な存在感が、知らず知らずのうちに彼の心を圧迫していた可能性は否定できない。愛しているからこそ生じるディスコミュニケーション。それは、多くの一般家庭にも共通する普遍的な悲劇でもある。