『鬼平犯科帳』の実写化の歴史は、そのまま日本の演劇・歌舞伎界の重鎮たちの歴史でもあります。主人公の長谷川平蔵(通称・鬼平)を演じてきた鬼平犯科帳 歴代キャストを振り返ると、初代・松本白鸚(八代目松本幸四郎)、丹波哲郎、萬屋錦之介、二代目中村吉右衛門、そして十代目松本幸四郎と、錚々たる名優たちが名を連ねています。
池波正太郎 原作の連載開始(1967年『オール讀物』)当初から、池波自身が「長谷川平蔵は初代松本白鸚をイメージして書いた」と公言していた逸話は有名です。その実子である二代目中村吉右衛門が1989年からフジテレビ系で主演を務めた鬼平犯科帳 ドラマ シリーズは、全150話・スペシャル14本に及び、まさに「平蔵=吉右衛門」という絶対的なイメージを確立しました。
吉右衛門が2026年に惜しまれつつ世を去った後、大役を受け継いだのが甥にあたる十代目松本幸四郎です。製作発表の場で見せた幸四郎の覚悟に満ちた表情と、「叔父が命を削って演じ続けた平蔵の魂を、自分の身体を通して次代へ繋ぐ」という発言は、時代劇ファンを深く感動させました。さらに、平蔵の若き日である「長谷川銕三郎」役を幸四郎の実子である市川染五郎が演じるという、親子三代・一族の血筋を通じた奇跡的な継承劇が実現しています。