厳しい演出家としての顔や、作品で見せる異彩の裏側で、岩松了はどのような家庭人であり父なのだろうか。周囲の証言やインタビューの端々から覗く素顔は、決して押しつけがましくない、しかし深い敬意に基づいた親子関係だ。
自らの美学やキャリアを子供に強要することはなく、個人の意志と個性を何よりも尊重する態度を貫いてきたとされる。息子がどの道を選んだとしても、自らの足で立ち、自身の眼で世界を見ることを静かに見守る――そんな適度な距離感こそが、彼らの信頼関係を根底で支えている。
表現者として生きる過酷さと悦びを、背中だけで語ってきた父。そしてその背中を凝視しながら自らの感性を磨いてきた息子。そこに介在するのは、甘えのない、プロフェッショナル同士のような高潔な絆である。