軽度の船酔いであれば、あくびや生唾、軽い頭痛程度で済みますが、重症化すると全身の生体機能が急速に低下します。特に注意すべき危険な状態と、その背後にある4つのリスクを把握しておかなければなりません。
① 嘔吐物の誤嚥による窒息
激しい吐き気に襲われ、ぐったりと仰向けに倒れ込んでいる状態で嘔吐すると、吐瀉物が気道を塞ぎ、数分で窒息に至る危険があります。特にアルコールを摂取していたり、体力の限界で意識が朦朧としている場合は咳反射が機能せず、静かに呼吸困難へと陥るため非常に危険です。
② 急激な脱水症状と電解質異常
嘔吐を何度も繰り返すと、水分だけでなくナトリウムやカリウムといった体内の重要な電解質が一気に失われます。水分補給を受け付けない状態が続くと、血圧低下や意識障害、重度の筋痙攣(テタニー様発作)を引き起こし、最悪の場合は循環不全によるショック症状を招きます。
③ 濡れと冷風による重症低体温症
船酔いで動けなくなると、波しぶきや雨、自身の冷や汗で衣服が濡れたまま甲板に放置されるケースが少なくありません。海上の強風にさらされ続けると、真夏であっても体感温度が急激に低下し、低体温症を発症します。体温が35度以下に下がると判断力が失われ、震えが止まり、やがて昏睡状態へと進行します。
④ 意識混濁による海中転落
嘔吐するために船べり(舷側)へ身を乗り出し、急な大波の揺れに耐えきれずバランスを崩して落水するパターンです。船酔いで筋力と反射神経が著しく低下しているため、海に落ちた際に自力で浮上・生存を維持することが極めて困難になります。