なぜ羊羹はこれほどまでに長持ちするのか。その秘密は、和菓子製造業が長年受け継いできた極めて合理的な製法にある。
羊羹の主原料は小豆、砂糖、そして寒天だ。じっくりと練り上げられる過程で水分が飛ばされ、砂糖の濃度が極限まで高まる。砂糖には自由水(微生物が繁殖に利用できる水分)を強力に抱え込む性質があるため、製品内の水分の多くが「結合水」へと変化する。結果として、細菌やカビが増殖できない環境が自然と作り出されるのだ。
この保存性の高さを象徴するのが、室町時代後期創業の老舗・株式会社虎屋だ。同社を代表する銘菓「とらや 夜の梅」は、一切の合成保存料を使わずに常温で約1年という長い賞味期限を誇る。同社元社長の黒川光博氏をはじめとする歴代の当主たちが守り抜いてきた伝統の羊羹は、密閉性の高いアルミ小袋包装と高い糖度設計によって、時間の経過に耐えうる頑丈な食品として完成されている。
日本和菓子協会の知見によれば、高糖度の練り羊羹は熟成によって角が取れ、まろやかな味わいに変化することすらあるという。さらに、こうした優れた保存技術を防災分野へ応用したのが井村屋株式会社だ。同社の「井村屋 えいようかん」は、特注のフィルム包装と独自の配合により、未開封で5年間という驚異的な長期保存を実現しており、災害時の貴重なエネルギー補給源として高く評価されている。