ビジュアルの驚異性以上に赤の女王を魅力的にしたのは、演じるキャストと吹き替え声優の圧倒的な表現力です。赤の女王のキャストであるヘレナ・ボナム=カーターは、当時パートナーであったティム・バートン監督から「君の頭を巨大にしてみたい」と打診され、快諾したというエピソードが残っています。
彼女はインタビューの中で、赤の女王の心理について「彼女はただの怪物ではなく、精神的に成長を止められた幼児のような存在」と分析しています。怒りに任せて物を投げつけ、自分の思い通りにならないと即座に処刑を命じる行動様式は、駄々をこねる幼児そのものです。この計算された無邪気な残虐性が、キャラクターに唯一無二の生々しさを吹き込みました。
そして、日本市場における成功を決定づけたのが、日本語吹き替え声優を務めた朴璐美の怪演です。『鋼の錬金術師』のエドワード・エルリック役や『進撃の巨人』のハンジ・ゾエ役などで知られる実力派の彼女は、赤の女王のヒステリックな高音から、心の奥底にある寂しさを滲ませる震え声までを見事にコントロールしました。有名な赤の女王の名セリフ「首をはねろ」の叫び声には、単なる威嚇ではなく「誰か私を愛してほしい」という魂の悲鳴が込められており、吹き替え版を観たファンから今なお絶賛され続けています。