富裕層の資金源を解き明かす鍵は、1975年から15年間続いたレバノン共和国内戦の時代まで遡る。戦乱のさなか、国内のインフラや産業が破壊される一方で、一部の有力家系や政商は物資の密輸や外貨の闇取引を通じて莫大な資本を集積した。国家機能が麻痺したことで生まれた法制度の抜け穴が、資産家たちにとって絶好の蓄財の場となったのだ。
さらに、国際的な長者番付を発表する米誌フォーブスのリストを眺めると、人口600万人規模の小国にもかかわらず、驚くべき数のビリオネアが名を連ねていることに気づく。彼らは国内市場の狭さに依存していない。高度にネットワーク化された国際金融を縦横無尽に駆使し、ドル建ての国外口座や不動産ポートフォリオへ資産を即座に退避させるスキームを構築している。市民の預金が国内銀行に凍結される一方で、富裕層の資金は最初からグローバルな安全地帯に置かれていた。