若き日の千代の富士貢を最も苦しめたのは、両肩の度重なる脱臼だった。幕内に昇進した当初、軽量ゆえの鋭い踏み込みは諸刃の剣となり、大型力士の圧力に肩関節が耐えきれず幾度も土俵上で苦悶の表情を浮かべた。普通であれば引退すら囁かれる致命的なハンデに対し、彼が選んだ答えは医学の常識を超える壮絶な肉体改造だった。
肩を保護するため筋肉の鎧を纏うという決意のもと、毎日500回以上の腕立て伏せを日課とし、関節の周囲に強靭な筋肉の補強帯を作り上げた。この筋肉補強によって脱臼癖を克服しただけでなく、相手の攻めを一瞬で封じ込める爆発的な威力を手に入れた。この過酷な鍛錬こそが、後に打ち立てる伝説の53連勝記録という偉業の確固たる基盤となったのである。