単なる本人の思い込みだけではなく、テレビ局側の演出構造や空間設計も勘違いを加速させる要因となった。NHK総合のメインホールは、煌びやかなレーザー照明と大型LEDモニターがひしめき合う特殊な空間だ。生放送の本番、モニターに映し出されるグラフィックのタイミングと、音声のタイムラグがコンマ数秒単位で交錯する。
立ち位置の番号、照明が照らし出すスポットライトの角度、そして大歓声にかき消されるマイクの音声。極限状態にあった彼女の視界には、自分を照らす光と周囲の空間が、まるであつらえられた「祝福の演出」のように見えてしまったのだ。テレビの前の視聴者には残酷なコントラストとして映ったシーンだが、現場の過剰な演出効果と舞台上の心理変化が合致してしまった悪魔的な奇跡だったと言える。