猛獣と飼育員が同じ空間に立ち入る「同一空間侵入」は、動物園の飼育管理において絶対にあってはならないタブーです。事故調査によって明らかになった決定的な原因は、前日夕方の獣舎収容作業における二重三重の確認漏れでした。
事故前日の1月4日夕方、ボルタを屋外放飼場から夜間個室(寝室)へ収容する際、本来であればトラが個室に入ったことを目視で確認し、仕切り扉の施錠を行う手順となっていました。しかし、担当飼育員はボルタが個室に入りきっていない状態を見落としたまま扉の施錠レバーを操作し、「トラが個室にいる」と思い込んで作業を終了させていました。
さらに園内の安全管理マニュアルでは、退勤時や翌朝の点検時に「ホワイトボードによる収容状況の共有」や「複数人によるダブルチェック」が義務付けられていたものの、現場では日頃から単独作業が常態化し、確認記録の照合作業も形骸化していました。その結果、ボルタが一晩中通路を徘徊できる危険な状態が放置され、翌朝の清掃・点検に入った飼育員との正面衝突を引き起こしました。