音楽史に燦然と輝く名盤を語る上で、ロックの時代を定義したアイコン的アートワークの存在は外せない。ビートルズの『アビイ・ロード』は、スタジオ前の横断歩道を渡る4人の姿を捉えただけのシンプルな写真でありながら、世界で最も模倣されたジャケットとなった。カメラマンのイアン・マクミランが脚立の上からわずか数分間で撮影したとされるこのカットには、メンバーの歩幅や裸足のポーズを巡る多様な解釈が生まれ、都市伝説とともに世界中へ拡散していった。
一方で、ピンク・フロイドの『The Dark Side of the Moon』は、黒背景に光の屈折を描いたプリズムのデザインで聴衆の度肝を抜いた。バンド名やアルバムタイトルすら排した神秘的な構図は、聴く者を宇宙的な音響空間へと誘う。音と視覚が完全に融合した瞬間であり、ジャケットが単なる包装紙ではなく、独立した芸術作品として認識される決定的な転機となった。