心理学および物語論の視点からシン・アスカというキャラクターを分析すると、彼が主人公の座から滑り落ちた根本的な原因は「健全な心理的バウンダリー(境界線)の崩壊」と「適切なメンター(導き手)の不在」に集約されます。
シンは目の前で両親と妹を失った強烈なPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えており、「もう二度と大切な者を失いたくない」という切実な防衛本能を持っていました。しかし、その純粋すぎる感情を救済したのは、共感的な指導者ではなく、彼の承認欲求とトラウマを巧みに利用する指導者・デュランダルでした。デュランダルとレイ・ザ・バレルによる心理的誘導は、シンから客観的な批判的思考力を奪い、依存関係へと誘い込みました。
本来であれば兄貴分として彼を軌道修正すべきだったアスラン・ザラもまた、自らのアイデンティティクライシスに苦しんでおり、シンの感情に寄り添う対話ができませんでした。心理的に孤立したシンは、自らを「正義の代行人」と思い込むことで心の平衡を保つしかなく、その結果として視聴者の共感を失い、物語の客観的中心から外れていったのです。