啄木の代名詞である第一歌集『一握の砂』、そして死後に刊行された『悲しき玩具』。伝統的な五七五七七の枠組みを打ち破り、三行分かち書きという独自のスタイルで詠まれた短歌は、当時の歌壇に革命をもたらした。
「働けど 働けど 猶我が生活は 楽にならざり」という有名な一句は、単なる貧乏の嘆きではない。家族を養わなければならない重圧、己の怠惰さ、借金から逃れられない現実といった泥沼の人間関係の中から絞り出された慟哭なのだ。死の直前に編纂された『悲しき玩具』には、結核に侵され病床に伏しながらも、生きることへの執着と絶望を詠んだ歌が並ぶ。彼の歌が時代を超えて胸を打つのは、一切の綺麗事を排除した人間の弱さがそこにあるからだ。