彼の役者人生を語る上で欠かせないのが、演出家・蜷川幸雄との出会いだ。日本の舞台演劇界を牽引した鬼才・蜷川の厳しい要求に対し、彼は常に期待以上の熱量で応え続けた。『ハムレット』や『近代能楽集』など、過酷な演出で知られる蜷川舞台において、その身体性と異彩を放つ声は不可欠なピースだったといえる。
客席の最前列から後方まで、一瞬にして空気を引き締める緊迫感。蜷川が求めた「劇的な空間」を立ち上げるために、彼が注ぎ込んだ情熱は並大抵のものではなかった。舞台上で見せる鬼気迫る表情と、言葉一つひとつに込められた説得力は、劇場に足を運んだ観客の記憶に今も鮮明に焼き付いている。