虎をモチーフにした怪異表現の金字塔といえば、藤田和日郎による名作『うしおととら』を外すことはできない。小学館の「週刊少年サンデー」で連載された本作に登場する大妖怪「とら」は、黄色い巨体に長髪をなびかせ、圧倒的な妖力と凶暴性を誇りながらも、どこか人間くさい愛嬌を同居させた唯一無二のキャラクターだ。
一方、日本文学の視点から「虎と変身」を捉え直した第一人者が中島敦である。名作短編『山月記』において、プライドの高さゆえに自らを苛み、ついに人から虎の異形へと変貌してしまった詩人・李徴の悲劇は、今なお読者の心を深く抉る。獣の身へと堕ちながらも人間の心を残す切なさは、ダークファンタジーの核心にある「人間性の喪失と葛藤」のモチーフとして、後世のクリエイターたちへ多大な影響を与えた。