夜になると巨大人型の半透明な夜の姿「デイダラボッチ」へと変態するシシ神。エボシ御前の放った石火矢によって首を切り離された瞬間、作品のトーンは神話的ファンタジーから一転、終末論的なホラーへと変貌を遂げます。「シシ神の首 トラウマ 怖い」とネットやSNSで長年語り継がれる恐怖の本質は、生命の秩序が完全に逆転した異様な描写にありました。
首を失ったデイダラボッチの体内から溢れ出した「黒い液体」は、触れるものすべての命を瞬時に奪い尽くす純粋な死の奔流です。足元に咲いては枯れる草花どころか、触れた木々は一瞬で腐朽し、飛び火を浴びた人間や動物は苦悶する間もなく絶命します。なぜあれほど神聖だった存在が、無差別の殺戮マシンと化してしまったのでしょうか。
スタジオジブリの公式資料や演出覚書によると、シシ神はもともと「生を与える力」と「命を吸い取る力」の両極を絶妙なバランスで保持していました。しかし、中枢である頭部を切り離されたことで制御を失い、生を司る機能が崩壊。死のエネルギーだけが際限なく噴出するデイダラボッチの暴走を引き起こしたのです。
首のない巨大な肉体が、自らの頭部を求めて地上を徘徊し、タタラ場ごとすべてを呑み込んでいく地獄絵図。穏やかな人面の笑みを浮かべたまま死を司っていた神が、首をもがれた瞬間に「自然の底知れぬ復讐者」へと変じた光景は、観る者に人間の矮小さと傲慢への戦慄を否応なく突きつけました。