物語の中盤から終盤にかけて最大の衝撃となるのが、大上章吾の突然の失踪と無惨な死です。大上はなぜ命を落とすことになったのか、その経緯と背後関係には、呉原市を取り巻く暴力団同士の勢力争いと、警察内部の腐敗が複雑に絡み合っていました。
当時、呉原では地元の尾谷組と、巨大組織・五十子会(いらこかい)の傘下にある加古村組が一触即発の抗争状態にありました。大上はこの戦争を未然に防ぐため、違法な手段を辞さず、自らが均衡を保つバランサーとして暗躍していました。しかし、五十子会会長・五十子正平と結託していた警察上層部の思惑、そして大上を危険視した加古村組の暴走により、大上は孤立無援の罠に嵌められることになります。
捜査の過程で単独行動をとっていた大上は、加古村組の組員たちによって拉致され、凄惨なリンチを受けました。公式な死因は豚小屋の汚泥水に顔を沈められたことによる窒息死(溺死)という、あまりにもむごたらしいものでした。さらに遺体は川に遺棄され、無残な姿で発見されることとなります。「手段を選ばない悪徳警官」と見なされていた大上ですが、その正体は、市民に犠牲者を出さないために自ら泥をかぶり、巨大な悪と警察組織の闇を一身に引き受けていた真の防波堤でした。