近年の日本における映画産業は、王道のエンターテインメントや人気アニメの映画化が市場を牽引する傾向が強かった。しかし、その潮流に鋭い一石を投じたのが本作だ。ジャンルとしては濃密なサイコスリラーでありながら、単なる恐怖演出を超えた極めて高度なサスペンス映画として構築されている。
物語の根底に流れるのは、日常が崩壊していく過程を克明に追う犯罪ミステリーの緊張感だ。観客はスクリーンに映し出される一挙手一投足から目が離せない。影の使い方は秀逸で、静寂そのものが恐怖の演出として機能している。恐怖映画の枠組みを借りつつ、人間の普遍的な孤独や不信を描き切る手腕は、まさに圧倒的と言うほかない。