作者であるきくおの卓越したサウンドメイクは、初音ミクという「人間ではない存在」を通してのみ完成する。もしこれが人間の歌手によって生々しく歌われていたら、あまりの重さにリスナーは引いてしまったかもしれない。無機質な機械の歌声だからこそ、狂気は純化され、ファンタジーとしての美しさを保つことができる。
首輪をはめ、身の丈に合わない優等生を演じ、それでも愛されたいと願う少女の物語。それは、親や社会からの期待に押しつぶされそうな現代の若者たちの姿そのものだ。きくおは、ポップミュージックというオブラートに包んで、現代社会の致命的な病理を切り取ってみせた。