だが、この地の神秘性は光の側面だけにとどまらない。津山事件(津山三十人殺し)という、日本犯罪史上に残る凄惨な事件の舞台となった歴史が、加茂町行重地区の背後に重く横たわっているからだ。1938年(昭和13年)5月、21歳の青年・都井睦雄が数十分の間に30名もの村人を殺害し、自ら命を絶った。夜ばいの風習、病いへの偏見、孤立感が生み出した狂気は、静寂な山村を一瞬にして地獄絵図へと変えた。
事件から80年以上が経過した今も、現場付近には静けさだけが漂う。歴史の傷痕を単なる物野次馬的な好奇心で消費することは、地元住民にとって深い痛みを伴う。現地を歩くと、歴史の教訓と人間の孤独という普遍的な問いが、静けさの中から重く問いかけてくる。