全国に1,000店舗以上を展開するサイゼリヤが鳥取県へ進出していない背景には、単なる市場規模の問題にとどまらない、同社独自の高度なビジネスモデルと物流構造が存在します。取材および外食産業データから浮かび上がった決定的な理由は主に3点です。
第1の要因は、セントラルキッチンと物流網の維持限界です。サイゼリヤの強みである「ミラノ風ドリア(税込300円)」に代表される圧倒的な低価格は、自社工場(セントラルキッチン)で下処理された食材を冷却状態のまま店舗へ直送し、店舗側の調理工程を極限まで省くことで実現しています。関西圏や兵庫県にある生産・物流拠点から鳥取県内へチルド配送を行う場合、走行距離と時間に対する配送効率が極めてシビアな課題となっていました。
第2の要因は、徹底したドミナント戦略(地域集中出店)の原則です。同社は1店舗だけを単独で遠隔地に出店することを極力避けます。1つの配送トラックで近接する5〜10店舗を巡回配送できなければ、物流コストが跳ね上がり、低価格・高収益のビジネスモデルが崩壊してしまうためです。
第3の要因は、出店条件に合致するテナント物件の確保です。ロードサイドの独立店舗や、集客力のある大型ショッピングモール(イオンモールなど)内の区画において、サイゼリヤが求める店舗面積(約60〜80坪)と設備条件、賃料コストが折り合わなければ契約には至りません。