土曜日の午前11時。店内の狭い通路はすでに人波で埋め尽くされていた。飛び交う言語は日本語だけではない。英語、中国語、フランス語が交錯する。
台湾から訪れたという30代の男性投資家は、ショーケースに飾られたヘラクレス・ヘラクレスの大型成虫を食い入るように見つめていた。「台湾でもクワガタ飼育は大人気ですが、本物のトップブリーダーの血統や質の高い飼育用品はすべて中野に集まる。ここに来るのは3回目です」と彼は熱っぽく語る。
日本発の「甲虫飼育文化」は、いまや「Bonsai(盆栽)」や「Anime(アニメ)」と並ぶ一大輸出品目としての地位を確立しつつある。特にここ数年、ヨーロッパや北米の富裕層の間で、部屋のインテリアとして巨大なオオクワガタや美形カブトムシを飼育し、アートのように鑑賞するスタイルが定着した。一匹の希少な血統個体が数十万円、時には数百万円で取引されるケースも珍しくない。