終戦前夜から当日にかけての宮城事件を描いた金字塔といえば、昭和史研究家・半藤一利の著作『日本のいちばん長い日』だ。陸軍青年将校たちが玉音放送の音源(玉音盤)を奪取しようと皇居へ侵入した怒涛の24時間は、東宝によって映画化され、日本映画史に残る最高峰の戦争映画として今なお語り継がれている。
命を賭して玉音盤を守り抜いた宮内省職員や侍従たちの攻防は、単なるフィクションではない。半藤が関係者への徹底取材で掘り起こした事実の骨組みは、今回発見された新資料の記述とも見事に合致する。緊迫した夜の暗闇の中で、歴史の針がどちらに振れてもおかしくなかった危うい均衡が存在していた。