業界内でまことしやかに囁かれる「地上波放送終了説」。荒唐無稽な噂に聞こえるかもしれないが、通信と放送の融合が進む技術的潮流を俯瞰すれば、完全な絵空事とは言い切れない。莫大な費用をかけて全国津々浦々に送信所や中継局を維持し続けるコスト構造は、すでに限界点に達しつつある。
電波からブロードバンド(IP網)への全面移行が実現すれば、設備維持費を劇的に削減できる可能性がある。英国のBBCをはじめとする海外の公共メディアも、将来的な電波放送の停止と完全配信化をロードマップに掲げ始めた。日本でも、AMラジオの停波やBSチャンネルの再編削減が現実のものとなっている。
しかし、ここで立ちふさがるのが「災害時の生命線」としての公共放送の役割だ。能登半島地震をはじめとする大規模自然災害において、通信障害に左右されずに届く電波の信頼性は証明されたばかりだ。インフラの刷新と災害報道の担保という二律背反を抱え、地上波の未来は濃い霧に包まれている。