改めてショウ・タッカーという人物を解剖すると、そこには現代の格差社会や成果主義の暗部が恐ろしいほど色濃く投影されている。国家錬金術師という特権的な地位、それに伴う膨大な研究費。しかし、成果を出せなければ即座に資格を剥奪され、平穏な生活は瓦解する。彼を突き動かしていたのは、純粋な悪意ではない。身勝手な保身と、研究者としての異常な執着だ。
最初の犠牲者は彼の妻だった。そして2年後、追い詰められたタッカーが目を向けたのは、自分を全幅の信頼の眼差しで見つめる一人娘と愛犬だったのだ。実験室の暗がりで繰り広げられた禁忌の錬成。そこにあったのは、愛する者を「研究素材」としてしか見なくなった人間の精神的崩壊に他ならない。