ネット上のQ&Aサイトや掲示板では、「タバコやお酒を大量に摂取すれば、歌手のようなかっこいいハスキーボイスになれる」という俗説が長年信じられてきました。しかし、ボイスクリニック専門医の臨床現場では、この言説は完全に否定されています。
喫煙や多量のアルコール摂取によって生じる声の変化は、声帯全体が水ぶくれのように膨らむポリープ様声帯(ラインケ浮腫)と呼ばれる病態です。これにより声は確かに低音化しガラガラ声になりますが、声のコントロール性は著しく低下し、高音域は完全に失われます。さらに慢性的な息切れや閉塞感を生じ、40〜50代以降に重度の呼吸困難に陥る症例も報告されています。
SNS上でも「役作りのために大声で叫んで喉を潰した結果、舞台本番で全くセリフが通らなくなった」「カラオケで喉を枯らしたら、かすれ声どころか息しか出なくなって仕事を数日休む羽目になった」という苦い体験談が数多く投稿されています。「声を潰して作るハスキー」と「技術で出すハスキー」は、音響学・医学の観点から完全に別物です。