あの大火災直後から、沖縄県警察と那覇市消防局は合同で延べ数百人規模の実況見分を敢行した。現場から回収された膨大な炭化物を前に、捜査員たちが注視したのは正殿1階の北東側エリアである。そこには延長コードや分電盤、各種照明機器の配線が密集していた。
消防の鑑識班が注目したのは、銅線に残された「溶融痕」だった。電気がショートした際に生じる特有の痕跡である。当初、これが火災を引き起こした一次痕なのか、あるいは周囲の炎で焼かれた二次痕なのかについて激しい議論が交わされた。科学捜査研究所での電子顕微鏡解析やX線非破壊検査を繰り返した結果、火災発生以前に明らかな短絡が起きていた決定打とまでは断定できなかった。
放火や外部からの不審者侵入を示す痕跡は一切見つかっていない。タバコの吸い殻や油分などの発火促進剤も検出されなかった。消去法的に「電気系統のトラブルに起因する可能性が高い」と結論づけられつつも、消防と警察の最終報告書は「原因特定に至らず」という慎重な表現で締めくくられた。証拠そのものが高熱で焼き尽くされた物理的限界が、事件と事故の境界線を曖昧にしたまま今に至る。