昭和から平成、そして令和に至るまで、日本のエンターテインメント産業の第一線で輝き続けてきた草刈正雄。その端正な顔立ちと日本人離れしたスタイルは、かつて多くのファンを魅了する一方で、本人にとっては重いアイデンティティの葛藤そのものだった。
母・スエ子さんは生前、父について「朝鮮戦争で命を落とした米軍兵士」とだけ語り、それ以上の詮索を許さなかった。写真一枚すら残されていない。戦死告知書もない。ただ「この世にはもういない」という言葉だけが、息子の心に楔のように打ち込まれていた。
ところが、日本放送協会が誇る調査報道班の手によって、歴史の闇に葬られていた事実が暴かれる。父親の名はロバート・H・トーガソン。アメリカ陸軍の兵士として日本に駐留していた人物だ。公的記録を徹底的に洗った結果、判明したのは「戦死」という母の言葉を根底から覆す、驚くべき真実だった。ロバート氏は戦地を生き延び、アメリカ本国へ帰還後、2013年まで天寿を全うしていたのである。