『はたらく細胞』の魅力は、主要な細胞だけでなく、脇を固める白血球分画の細やかな役割分担まで忠実にエンターテインメントへと昇華させている点にあります。
物語の中で、謎めいた詩的なフレーズばかりを口にして周囲を煙に巻く好塩基球(CV: 杉田智和)は、全白血球のわずか0.5〜1%未満しか存在しない希少な細胞です。作中では変わり者として描かれていますが、実際の生体内でも好塩基球は肥満細胞を誘導したり、アレルギーの後半ステージで炎症を持続させるシグナルを送ったりする重要な調整役を担っています。
一方、ツインテールで二股の槍を構えた好酸球(CV: M・A・O)は、普段は細菌相手に苦戦し周囲から頼りなく見られてしまいますが、寄生虫感染時には無類の強さを誇ります。さらにアレルギー局面においては、肥満細胞が放出したヒスタミンを分解する酵素(ヒスタミナーゼ)を分泌し、暴走した炎症を鎮静化させようとするブレーキ役の側面も併せ持っています。各細胞がそれぞれの職務を全うしようと葛藤する姿は、人体の緻密なバランス感覚そのものです。