急成長を続けるDeNAのトップとして多忙を極めていた2011年5月、南場氏は突然の代表取締役社長退任を発表します。東証一部(現・プライム)上場企業の創業社長が絶頂期に身を引くという決断は、経済界に大きな衝撃を与えました。
退任の理由は、元マッキンゼーの同僚で起業家でもある夫・紺野義夫氏のガン闘病を支えるための看病でした。当時の記者会見や手記において、南場氏は「どんなに仕事が大切でも、今この瞬間に夫のそばにいること以上に優先すべきことはない」と語り、迷うことなく家庭を最優先にする決断を下したのです。
約2年間に及ぶ献身的な看病と治療生活を経て夫の病状が寛解へと向かった後、2013年に取締役としてDeNAに復帰。2015年には取締役会長に就任しました。日本の企業社会において「仕事と家族の優先順位」は長年タブー視されがちでしたが、自らの信念に従って代表の座を潔く手放し、その後再び組織の柱として返り咲いた南場氏の行動は、多くの働く人々に深い感銘を与えました。