映画監督やプロデューサー、劇作家たちが口を揃えて賞賛するのが、錦戸亮の演技力と評判の根幹にある「天性のリアリズム」です。多くの俳優が台詞のイントネーションや大きな身振りで感情を表現するのに対し、錦戸の芝居は「沈黙の瞬間」や「視線の微細な揺らぎ」によって成立しています。
心理学における「感情のアンビバレンス(愛憎の二律背反)」を表現する能力において、彼は突出しています。例えば、深い愛情の裏に潜む加虐心や、救いようのない絶望の中でふと見せる無垢な笑顔など、人間の精神が持つ多面的なグラデーションを説明的な芝居なしに観る側へ直接届ける技術を持っています。
また、宮藤官九郎や遊川和彦といった日本屈指の脚本家たちが彼に当て書きを行う理由について、あるキー局のドラマ制作プロデューサーは次のように分析しています。
「錦戸さんの芝居には、昭和の銀幕スターが持っていたような哀愁と、現代の青年が抱えるリアルな生活感が同居している。台詞を喋っていない瞬間の佇まいに物語が宿るため、演出側としてはカットを割らずにカメラを回し続けたくなる稀有な役者です」