主人公の宮川正平は、決して完璧なヒーローではない。デザイナーを目指して上京したものの、現実は甘くない。失敗に落ち込み、欲望に負けそうになり、優柔不断さに葛藤する。そんな等身大の青年の内面が克明に描かれたからこそ、読者は彼に自己を投影したのだ。
一方、正平が憧れる白井みゆきは、知性と気品を兼ね備えたマドンナ的存在だ。だが彼女もまた、過去の恋愛の傷や将来への不安を抱えるひとりの女性として描かれる。彼女の見せるふとした弱さや大人びた表情が、正平の心を強く揺さぶる。一方で、田舎から正平を追って上京してきた姫野みゆきの存在が、物語に大きな波紋を呼ぶ。二人の「みゆき」の間で揺れ動く正平の心理描写は、当時の青年誌において際立ったリアルさを持っていた。