かつてインド北部に位置するカシミール地方の王室や貴族の宴席で重宝されたカシミール料理は、その洗練されたハーブやスパイスの使い方で知られてきた。なかでもマトンローガンジョシュは、鮮やかな赤い色合いと豊かな香りで人々を魅了し続けている。伝統的に「ローガン」は澄ましバター(ギー)や脂質を指し、「ジョシュ」は熱情や煮沸する熱気を意味する。
この極上のインド料理が世界中で急速に認知度を高めた背景には、近年の映像メディアの進歩がある。Netflixが世界配信する人気ドキュメンタリー番組『シェフのテーブル』をはじめとする食カルチャーコンテンツの普及により、地域固有のハイエンドな伝統料理に対する世界的な関心が一気に高まった。単なる「辛いカレー」の域を超えた洗練されたスパイス料理として、国際的な美食シーンの第一線へと躍り出たのだ。