彼の歩みは、日本の芸能界の中でも極めて異色だ。日本最高峰の学府である東京大学に在学中、就職活動を控えた時期にリーダーの酒井一圭から誘いを受け、あっさりと大学を中退。未知の領域だったムード歌謡の世界へ飛び込んだ。当時は「狂気の沙汰」とも言われたその決断から、まもなく20年が経とうとしている。
「あの時の選択に後悔はない」。かつてインタビューでそう語っていた彼だが、エリート街道を捨てて選んだのは、全国の健康ランドやスーパー銭湯の狭いステージだった。高齢の観客と至近距離で触れ合い、握手を交わし、CDを手売りする日々。その泥臭い経験こそが、現在の彼の人間味あふれるパフォーマンスの血肉となっている。