前川清の歌唱における最大の魅力は、直立不動の立ち姿から繰り出される圧巻の表現力と、唯一無二の独特な節回しにある。『恋唄』を単なるカラオケの曲としてではなく、人の心を揺さぶる「作品」として歌い上げるためには、彼の歌唱スタイルの本質を理解することが欠かせない。
第一のポイントは「ビブラートの使い分け」だ。語尾を無闇に伸ばすのではなく、伸ばし切る直前にフッと深く大きな揺れを入れる。これが前川流の切なさを演出する。第二に「しゃくり」と「ため」の絶妙なコントロール。拍子のジャストなタイミングからわずかに遅らせて声を出す「ため」を利かせることで、言葉に重みと未練の感情が宿る。そして何より重要なのが、フレーズの切れ目で見せる一瞬の間(ま)だ。息を吸い込む音さえも表現の一部に変えてしまうような静寂の使い方が、聴き手の涙腺を刺激する。