『マルサの女』を語る上で外せないのが、権藤英樹が語る数々の名言と名シーンです。特に、亮子に対して金儲けの極意を説く「コップの水」の例え話は、資本主義の本質を突いた名台詞として有名です。
「金を貯めようと思ったら使わないことだ。水がコップにいっぱい溜まっても飲んじゃいけない。溢れて垂れてきたやつを舐めるんだ」——この台詞を煙草を燻らせながら冷然と言い放つ山崎努の口調は、説得力と凄みに満ちており、観る者の脳裏に強烈に焼き付きます。
そして物語のクライマックス、査察を逃れられないと悟った権藤が、自らの指をカミソリで傷つけ、血を朱肉代わりにして差し押さえ調書に拇印を押すシーン。権藤と亮子の間にある種の奇妙な連帯感と愛憎が交錯するこのラストは、山崎努と宮本信子の演技の火花が散る最高潮の瞬間といえます。