意識レベルの低下は、脳出血や脳梗塞などの頭蓋内病変だけでなく、敗血症、低血糖、低酸素血症、高二酸化炭素血症(CO2ナルコーシス)、電解質異常といった全身性の代謝障害によっても急速に進行します。JCSの低下を確認した際、単に「JCSが悪化した」と記録するだけでは急変対応として不十分です。
意識障害時にJCSとセットで確認すべき5大観察項目
医師への緊急コール(エスカレーション)を行う前に、以下の項目を同時並行で瞬時に評価します。
- 1. 瞳孔所見(瞳孔不同・対光反射):左右差(瞳孔不同 / Anisocoria)や散瞳、対光反射の消失は脳ヘルニア切迫の超緊急サイン。
- 2. 共同偏視・眼球偏位:病変側または麻痺側をじっと見つめるような異常眼球運動の有無。
- 3. 片麻痺(Motor Weakness):自発運動の左右差、顔面麻痺、バレー徴候や足底反射の異常。
- 4. 呼吸パターンとバイタルサイン:クスマウル呼吸、チェーン・ストークス呼吸、クッシング現象(血圧著明上昇+徐脈)。
- 5. 迅速血糖測定(BST):意識障害をきたす最大の除外項目である「低血糖」の有無(血糖値60mg/dL未満は即座に糖毒性・不可逆性脳障害を招くため最優先確認)。
医師への迅速な急変報告(SBARフォーマット)と看護記録の文例
臨床で信頼される看護記録を作成するには、JCSのスコアに加え「どのような刺激に対して、どのような具体的反応があったか」というファクトを客観的に描写することが鉄則です。
【医師へのSBAR報告例】 「S(状況):〇〇号室のA様ですが、意識レベルが先ほどまでのJCS 0から急変し、現在JCS II-20まで低下しています。
B(背景):本日午前中に脳梗塞の血栓溶解療法(t-PA)を施行された方です。
A(評価):大声で呼びかけると辛うじて開眼しますが発語はなく、右瞳孔が4mmで対光反射が鈍麻、左半身に明らかな弛緩性麻痺を認めます。血圧は185/100mmHgに上昇しています。
R(提案):頭蓋内出血の疑いがあります。至急ベッドサイドでの診察と緊急頭部CTのオーダーをお願いできますでしょうか」
カルテのSOAP記録においても、「O(客観的データ):JCS II-20(大声で呼名すると数秒間開眼するが指示動作不可、右手でこちらの腕を弱く掴む。刺激をやめると速やかに閉眼)」のように、後から誰が見ても同じ状態を再現できる解像度で記載することが求められます。