山梨県出身の辻村深月は、幼少期からミステリや文学に親しみ、千葉大学教育学部に在学中の2004年に講談社主催のメフィスト賞を受賞した『冷たい校舎の時は止まる』で鮮烈なデビューを飾りました。講談社ノベルスから刊行された同作は、雪に閉ざされた校舎に閉じ込められた高校生たちの心理劇と謎解きが緻密に融合した傑作であり、文壇に新たな才能の台頭を強く印象づけました。
デビュー以降のキャリアは、着実なステップアップと主要文学賞の受賞歴に彩られています。2011年には、死者との再会を仲介する使者を描いた連作短編集『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞を受賞。翌2012年には、地方都市に暮らす女性たちの日常に潜む歪みや犯罪をリアルに切り取った『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞を受賞しました。デビューから8年、30代前半という若さでの直木賞獲得は、業界内外で大きな話題を呼びました。
辻村作品の真骨頂は、本格ミステリの骨組みを持ちながら、人間の内面心理を極限まで掘り下げる点にあります。2018年には、不登校の中学生たちが鏡の中の城に集うファンタジーミステリ『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。全国の書店員から圧倒的な支持を集め、歴代最多得票数(当時)を記録するなど、名実ともに国民的作家の地位を確立しました。