大乃国の相撲人生を語る上で欠かせないのが、1988年(昭和63年)11月場所千秋楽における千代の富士の53連勝阻止です。当時、53連勝という不滅の大記録を打ち立て、国民的英雄として絶頂期にあった大横綱・千代の富士に対し、大乃国は本割で真っ向勝負を挑みました。
立ち合いから右四つに組み止め、千代の富士得意の左上手まわしを許さず、力強く土俵外へ寄り倒した瞬間、福岡国際センターは割れんばかりの歓声と無数の座布団で埋め尽くされました。この一戦は単なる一勝にとどまらず、双葉山の69連勝更新へ突き進んでいた「ウルフフィーバー」にストップをかけ、昭和最後の大相撲を締めくくる伝説の取組となりました。
当時の報道や本人の回顧録によると、大乃国はこの場所、足首の激痛と体調不良で万全とは程遠い状態でした。しかし「他の力士が千代の富士関の威圧感に呑まれる中、横綱である自分が受けて立たずに誰が止めるのか」という強烈な当事者意識が、あの歴史的勝利を手繰り寄せました。記録へのプレッシャーを跳ね返し、横綱としての意地を土俵上に結実させた瞬間でした。