映画『あなたの番です 劇場版』における最大の焦点は、ドラマ版で狂気の連続殺人犯として暴かれた黒島沙和(西野七瀬)が本作でも手を下したのか、それとも別の真犯人が存在するのかという点でした。結論から言えば、劇場版における一連の船上殺人は「単独犯による計画的犯行」ではなく、複数の思惑と偶発的な事故・復讐が重なり合った連鎖劇です。
物語の発端となったマンション管理人・床島比呂志(竹中直人)の変死は、病を苦にした突発的な自殺および事故であり、交換殺人ゲームの開始ではありませんでした。しかし、舞台が豪華クルーズ船に移ったことで、閉鎖空間特有の疑心暗鬼が加速します。船上で発生した赤池美里・吾朗夫妻の毒殺事件、児嶋佳世や浮田啓貴の殺害において、決定的な役割を果たしたのは劇場版オリジナルキャラクターの浦辺優(門脇麦)と、黒島に狂信的な執着を見せる内山達生(荒木飛羽)でした。
浦辺はかつて家庭教師先であった赤池家で起きた過去の悲劇に強い恨みを抱いており、赤池幸子(大方斐紗子)および美里への復讐を目的に毒物を混入させました。一方で内山は、敬愛する黒島の「殺害衝動」を満たす代行者として暗躍。そして黒島自身もまた、自らの内なる猟奇性を制御できずに事件の引き金を引いていきます。
終盤、黒島は自ら海へと転落し命を絶とうとしますが、彼女に想いを寄せる「どーやん」こと二階堂忍(横浜流星)によって救出されます。事件は法の下で裁かれる形となり、菜奈(原田知世)と翔太(田中圭)は平穏を取り戻したかに見えました。しかし、ラストシーンで車椅子の赤池幸子が翔太に耳打ちした不気味な言葉によって、物語は再び底知れぬ狂気の余韻を残して幕を閉じます。