「たった数回の通院で、歯並びも色も完璧になる」という甘い広告文句で広まったいわゆる「セラミック矯正」ですが、日本矯正歯科学会などの専門家組織は警鐘を鳴らし続けています。なぜなら、これは本来の歯列矯正(ワイヤーやマウスピースで歯を移動させる治療)とは根本的に異なり、健康な歯を大幅に削り落として人工の冠を被せる「補綴(ほてつ)治療」に過ぎないからです。
この治療において最も恐ろしいのが、セラミック治療で神経を抜くリスクです。歯列から大きく飛び出している歯や、ねじれている歯に真っ直ぐなクラウンを被せるためには、歯冠の半分近くを削り落とす必要が生じます。その過程で歯の内部にある神経(歯髄)が露出し、激痛を伴うため、健康であったはずの神経を抜去(抜髄)する処置が不可避となります。
歯の神経を抜くことは、植物で例えれば「根を切り取って枯れ木にする」ことと同義です。血液や栄養の供給が断たれた歯は脆くなり、数年〜十数年後に噛む力に耐えきれず根元から折れる「歯根破折」を引き起こす確率が跳ね上がります。ネットの知恵袋や告発動画で語られるセラミック矯正の後悔と失敗談には、以下のような凄惨な現実が記されています。
「見た目と引き換えに、硬いものが一切噛めなくなった」
「神経を抜いた根元の部分に膿が溜まり、骨が溶けて激痛で再治療になった」
「治療した歯が次々に割れ、30代にして部分入れ歯やインプラントを提案された」
さらに見落とされがちなのが、オールセラミックの寿命とメンテナンスという現実です。人工歯自体は虫歯になりませんが、人工歯と自歯の微小な接着境界から虫歯菌が侵入する「二次カリエス」のリスクは常に付きまといます。一般的にオールセラミックの物理的な耐用年数は10〜15年程度とされており、一生モノではありません。就寝時の歯ぎしりから歯を守るナイトガードの常用や、数ヶ月ごとの厳格なプロフェッショナルクリーニングを怠れば、維持することは極めて困難です。10年ごとに数百万円の再治療費用と歯をさらに削るリスクが待ち受けている事実は、芸能人の華やかさの陰に隠された冷徹な現実といえます。