日本の伝統的な慣用句・故事成語の多くは、身体的動作や武芸の所作に由来を持つ。「揚げ足を取る」もその例外ではない。元々は相撲や柔道などの格闘技において、相手が技を仕掛けようとして持ち上げた足(揚げ足)を掴み、そのまま体勢を崩して倒す技法を意味していた。つまり、攻撃に出ようとした一瞬の隙を逆手にとる高度な攻防技術だったのだ。
しかし、時代を下るにつれて言葉の用法は肉体的な攻防から対話の場へと移行した。言語学者である新村出が編纂し、岩波書店が発行を続ける国語辞典『広辞苑』の記述を振り返っても、言葉の端々をとらえて相手の非を突く意味合いが定着してきた歴史が伺える。手軽に語彙を検索できるAmazon Kindle版の辞書コンテンツなどでも、この言葉の転用プロセスを詳細に知ることができる。